世界幸福度report(World Happiness Report)で北欧諸国は毎年トップ争いの常連だ。スウェーデンも例外ではない。だが2026年に発表された大規模研究は、この順位が18〜24歳の回答だけに絞ると、リトアニア・ベリーズ・コソボより下の30位まで転落することを明らかにした。国民平均という1つの数字が、世代間の巨大な溝を覆い隠していた。
Hansson Bittár et al.(2025, International Journal of Wellbeing)による大規模研究をもとに、若年層と高齢層のあいだの孤独感2倍・抑うつ症状3倍・不安7倍という較差、そしてそれでもなお高い将来への期待という、一見矛盾したデータを確認する。
アイスランド・デンマーク・スウェーデン・ノルウェーは、フィンランドと並んで世界幸福度ランキングの上位常連だ。だがHansson Bittár et al.(2025)が発表した大規模研究は、この順位が年齢構成によって大きく変わりうることを示した。もし世界幸福度reportの評価が18〜24歳の回答だけに基づいていたら、スウェーデンの順位は4位ではなく30位——リトアニア・ベリーズ・コソボといった国々よりも低い順位になる。
この研究は、ストックホルム商科大学・ルンド大学・オスロ・メトロポリタン大学・ハーバード大学の研究者による共同研究で、Flourishing(人生の開花・充実)という多面的な指標を用いている。
研究によれば、スウェーデンの若年成人は、最高齢層の回答者と比べて、孤独感が2倍、抑うつ症状が3倍、不安の水準が7倍に達する。生活満足度・人生の意味の感覚・経済的な安心感も、若年層の方が一貫して低い。福祉国家の充実したセーフティネットを持つ国であっても、この世代間の較差は避けられていなかった。
興味深いのは、この現在の苦しさが、将来への期待を打ち消していない点だ。若年成人は「5年後の生活満足度」について10点満点中平均8.06点を見込んでいる——これは全年齢の平均値6.65点を大きく上回る。90_usa・98_ukで見た「個人の将来には楽観的」という構造が、スウェーデンでは「現在の苦しさ」と「将来への高い期待」という、より極端な形で表れている。研究者は、社会的な理想や達成基準の高さ——SNSによって強化されている可能性がある——が、現在への不満と将来への期待の両方を同時に押し上げている可能性を指摘している。
「世界一幸福な国」という国民平均の看板は、若者が今まさに経験している孤独・不安・抑うつを覆い隠していた。それでいて、その若者たち自身は、将来を諦めてはいない。
この較差は、調査への回答だけでなく、実際の医療統計にも刻まれている。スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)の全国データによれば、2022年時点で18〜29歳の女性の約13%、男性の約6%が抗うつ薬による治療を受けていた。20〜24歳の女性に限ると、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の使用率は直近で20%上昇している。2024年には、スウェーデン全体で120万人超が抗うつ薬を処方され、これは統計開始以来の最多を更新した。
アンケートで語られた孤独感・不安の高さは、処方箋という具体的な行動の記録とも一致している。これは主観的な回答の誇張ではなく、医療システムを通じて裏づけられた較差だ。
スウェーデンの物語は、この連載全体を貫く教訓を、最も鮮やかな形で示している。87_genzhopeで確認した「測り方によって結論が変わる」という構造、93_generationsで確認した「異なる物差しは異なる真実を映す」という構造——スウェーデンの幸福度ランキングは、この2つを1つの国の中で同時に体現していた。政策の当否を論じることは本記事の範囲を超えるため、ここでは研究が示す構造の紹介に徹した。
「世界一幸福」という称号は、必ずしも「すべての世代が幸福」を意味しない。平均という数字の内側を見ない限り、その差は決して見えてこない。
本記事の要約・引用元。国際的な学術研究と政府統計を組み合わせている。
連載の主要記事を1冊に再構成し、書き下ろしを加えたKindle本です。数字では測りにくい豊かさを、所得・時間・関係・自由の視点から読み直します。
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