ドイツは今、国民の2人に1人が45歳以上、5人に1人が66歳以上という国だ。賦課方式の年金制度——今の現役世代が今の高齢世代を支える仕組み——を維持するコストは、法律を変えなくても、確実に重くなっていく。この記事では、その重さを具体的な数字で確認する。
年金保険料率が2045年に22.7%まで上昇するという政府見通し、老年従属人口指数が2005年から2050年にかけて倍増するという予測、そしてドイツ国民自身が高齢化の現状をどれだけ正確に認識しているかを調べた学術研究までを確認する。
ドイツは世界でも有数に高齢化が進んだ社会の一つだ。国民の2人に1人が45歳以上、5人に1人が66歳以上——ある分析はこの国を「高齢者共和国」と呼んでいる。老年従属人口指数(現役世代100人あたりの高齢者数)は、2005年時点の約32から、2050年には60を超える水準まで倍増すると見込まれている。2030年には現役100人あたり年金受給者50人、2060年には65人に達するという予測もある。
ドイツの公的年金は、労使折半の保険料率18.6%(2026年時点)によって賄われる賦課方式だ。政府の見通しでは、この料率は2030年に20.2%、2037年に21.1%、2040年に21.4%、そして2045年には22.3〜22.7%まで引き上げられる見込みとなっている。今のドイツで働く若い世代は、この上昇分を給与から天引きされる立場に置かれる。
年金の支給水準を維持しようとすれば、支える側の負担は自動的に重くなる。これは政治的な選択の余地がある問題というより、人口構成そのものが生む算数の帰結だ。
Schuetz, Stumpf, Uebelmesser, Baginski & Aprea(2025)は、代表性のある電話調査を用いて、ドイツ国民が人口動態の変化をどれだけ正確に認識しているかを調べた。結果、回答者は現在および長期の老年従属人口指数を、実際の数値よりも高く見積もる傾向があった——つまり「現状は実際よりも悪い」と誤解している。一方で、この指数が時間とともにどう変化していくかという「トレンドの方向性」についての認識は、実際の予測とおおむね近かった。
つまりドイツ国民は、高齢化の「速さ」については誤解しているかもしれないが、「進行していく」という方向性そのものについては、正確に理解している。
99_franceで見たフランスの年金制度が「改革してもなお赤字が拡大する」という構造だったのに対し、ドイツの賦課方式は、保険料率という数字が法律上すでに上昇スケジュールとして組み込まれている点で、より直接的だ。政策の当否を論じることは本記事の範囲を超えるため、ここでは統計と学術研究が示す構造の紹介に徹した。
「高齢者共和国」を支える現役世代の負担は、新しい法律を待たなくても、既に決まったスケジュールで重くなっていく。この事実そのものが、若い世代にとっての現在地だ。
本記事の要約・引用元。政府統計・年金制度の公式見通し・学術研究を組み合わせている。
連載の主要記事を1冊に再構成し、書き下ろしを加えたKindle本です。数字では測りにくい豊かさを、所得・時間・関係・自由の視点から読み直します。
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