「孫は無条件にかわいい」というのは、多くの祖父母にとって実感に近いだろう。だが、その実感の中身をリアルタイムで測定した研究は、幸福感の裏側にもう1つの感情が張り付いていることを示していた。
ケレケシュ、ブレーマー、オラル&バルハウゼン(2026)による125人の祖父母を対象にした「日々の経験と幸福感」研究——5日間・1日6回というリアルタイム測定(ESM/EMA)が示した、孫との接触が愛情・誇りを強める一方、心配・悲しみもわずかに強めるという二面性——「良い感情」と「悪い感情」が独立に動くという、幸福測定の方法論上の発見を追いかける。
孫との時間は、祖父母にとって疑いなくポジティブな出来事だという前提は、一般的な会話でも研究の初期段階でも広く共有されてきた。だが、この前提を検証するには、後から振り返って語られる思い出話ではなく、その瞬間その瞬間の感情を直接測定する必要がある。
ケレケシュ、ブレーマー、オラル&バルハウゼンによる「日々の経験と幸福感」研究は、125人の祖父母を対象に、5日間にわたり1日6回、その瞬間の感情を尋ねる経験サンプリング法(ESM/EMA)を用いた。誇り・満足・愛されている感覚・落ち着き・活力といったポジティブな感情と、不安・苛立ち・退屈・孤独・悲しみといったネガティブな感情の両方を、孫と一緒にいる時間・一人の時間・配偶者と一緒の時間・他者と一緒の時間で比較した。
この手法自体が、経験する自己と記憶する自己を扱った記事で見た区別と直接つながっている。後から振り返って評価する「記憶する自己」ではなく、その瞬間の「経験する自己」を直接捉えようとする試みだ。
結果、孫との接触は、一人でいる時間・配偶者と一緒の時間・他者と一緒の時間のいずれと比べても、一貫してより強いポジティブな感情、とりわけ愛情と誇りと結びついていた。ここまでは、素朴な前提どおりだ。
だが同時に、祖父母は孫と一緒にいるときの方が、より悲しみや心配を感じていると報告していた——ただし、この効果はポジティブな感情の強まりと比べると、相対的に弱いものだった。
ここが核心。孫との時間は、単純に「良い」か「悪い」かの一色ではなかった。愛情と誇りという強いポジティブな感情の陰で、心配や悲しみというネガティブな感情も、弱いながら確かに動いていた。良い感情と悪い感情は、独立した2本の軸として同時に動く——幸福感を単一のスコアに集約してしまうと、見えなくなる構造だ。
別の研究群が示す「世代性(generativity)」——次の世代の幸福に貢献し、自分の存在を未来へつなげたいという欲求——は、祖父母としての生活満足度を高める重要な要因として報告されている。とりわけ、孫から敬意を感じ取れている祖父母ほど、世代性の発揮が生活満足度の向上により強く結びつくという知見もある。心配や悲しみという一見ネガティブな感情も、この世代性の裏返しだと捉えることができる——孫の将来を案じる気持ちは、無関心からは決して生まれない。
回想療法を扱った記事で見た「対話に付き合う時間」という資源、Art26(つながり=反復の投資)で見た関係構築の蓄積とも同じ系譜にある。孫との関係は、ポジティブな配当だけでなく、心配というコストも伴う投資であり、そのコストの存在自体が、関係の本物さを裏付けている。
この研究はスイス・オランダなど西欧の125人という比較的小規模なサンプルに基づくものであり、家族構成・同居の有無・文化的な祖父母観が異なる社会にそのまま一般化できるとは限らない。また、経験サンプリング法は測定の瞬間の状況に強く依存するため、孫の年齢・接触の頻度・介護的な関わりの有無によって、感情の中身は大きく変わりうる。
※本記事は老年心理学に関する学術研究の紹介であり、特定の家族関係・育児方針を推奨するものではありません。
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