インドは世界で最も楽観的な若者人口を抱える国の一つだ。だが同じ国で、大卒者の失業率はこの40年間ほとんど改善していない。中央値年齢28.4歳という若さが生む楽観と、教育投資が労働市場に吸収されない現実——この2つが同時に存在する国の姿を追う。
Pew Research Center(2024/2025年調査)が示すインドの高い楽観率、大卒者の失業率が1983年の35%から2023年の39.3%へとほぼ変わらなかったという長期統計、そして2030〜2040年にピークを迎えるとされる人口ボーナスの窓が、この国にとって何を賭けた期間なのかを確認する。
87_genzhopeで見たように、Pew Research Centerの2024〜2025年の国際調査では、インドを含む南アジア・東南アジアの新興国で「子どもの世代の方が豊かになる」と答えた人が7割以上に達した。この楽観の土台にあるのは、人口構造だ。インドの人口中央値年齢は28.4歳——日本(49歳前後)や韓国、中国よりも大幅に若い。若く成長する労働力人口は、経済にとって明白な追い風になりうる。
だが同じ国の労働市場データを見ると、別の顔が浮かび上がる。この記事では、楽観の根拠である「人口ボーナス」と、その裏側にある「教育を受けた若者の失業」という矛盾した2つの現実を確認する。
インドの労働市場データが示す最も奇妙な事実の一つが、教育水準と失業リスクの逆転した関係だ。
25歳未満の大卒者の失業率は、1983年の35%から2023年の39.3%へと、40年でほとんど改善していない——むしろ悪化している。失業者全体に占める中等教育以上の学歴を持つ若者の割合は、2000年の35.2%から2022年には65.7%までほぼ倍増した。現在、インドで職を探している若者のおよそ3人に2人は、何らかの学位を持っている。1983年時点では、この割合は8人に1人程度だった。教育を受けることが雇用を保証しない、あるいはむしろ失業リスクを高めるという逆説的な構造が、40年にわたって続いている。
教育投資は増え続けているのに、それを吸収できるだけの「良い仕事」の数が、同じペースで増えていない。これが、楽観的な人口統計の裏側にある現実だ。
インドの人口中央値年齢は、2011年の24歳から現在の29歳前後まで上昇しており、2036年には36歳に達すると予測されている。人口ボーナス(労働力人口の割合が高く、扶養負担が軽い期間)の窓は2030〜2040年ごろにピークを迎え、2051年前後から人口構成が高齢化へ向けて反転し始めるとされる。2030年時点では労働年齢人口が10億人を超え、扶養比率(働いていない人口の割合)は過去最低の31.2%まで下がる見込みだ。
つまりインドには、労働力を経済成長に転換できる「窓」がおよそ数十年しか残されていない。この窓の間に、教育を受けた若い労働力を実際の雇用へとつなげる仕組みを作れるかどうかが、楽観が現実に変わるか、それとも「期待だけが先行した世代」になるかを分ける。
失業率とは別に、「卒業生がどれだけ企業の求める水準に達しているか」を測る指標もある。人材評価機関Wheeboxが65万人超の受験者と1,000社超の企業データをもとに算出する「インド・スキルズ・レポート」によれば、2025年の卒業生の即戦力率(employability)は54.81%——前年の51.25%から上昇し、10年前の33%と比べれば大きく改善した。分野別では経営学系が78%と最も高く、工学系71.5%・情報系(MCA)71%・理学系58%が続く。州別ではマハラシュトラ州が84%でトップ、デリー78%・カルナータカ州75%が続く。
だがこの改善は男女で異なる方向に進んでいる。2024年から2025年にかけて、男性の即戦力率は51.8%から53.5%へ上昇した一方、女性は50.9%から47.5%へ低下した——就業率全体は上向いていても、その恩恵は均等に分配されていない。
「大学を出た」ことと「企業が求める水準に達している」ことのあいだには、依然として大きな溝がある。そしてその溝の埋まり方は、性別によって逆方向に動いている。
インドの若者の楽観は、日本や韓国のような高齢化した先進国の悲観と比べれば、人口構造という点では確かに根拠がある。だがそれは、教育を受けた若者の失業という現実を打ち消すものではない。
88_koreaが「教育投資を注ぐほど出生数を減らす」という構造だったのに対し、インドは「教育投資を注いでも、それに見合う雇用が追いつかない」という別種の構造的なミスマッチを抱えている。人口ボーナスという有限の時間の中で、このミスマッチを埋められるかどうかが、次の数十年の分岐点になる。政策の当否を論じることは本記事の範囲を超えるため、ここでは統計が示す構造の紹介に徹した。
「若い国」であることは、豊かになる可能性を意味するが、自動的な保証ではない。人口ボーナスの窓は、開いている間にしか使えない。
本記事の要約・引用元。労働統計・人口統計・国際世論調査を組み合わせている。
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