2023年6月、中国の16〜24歳の失業率は21.3%を記録した。その直後、政府はこの統計の月次公表を5カ月間停止し、在学者を除外する新方式で再開した。同じ時期、若者のあいだでは「躺平(タンピン)=寝そべり」という言葉が広がっていた。統計を止めるという判断そのものが、この数字が持つ重さを物語っている。
中国国家統計局の若年失業率データ、13百万人が受験する高考(ガオカオ)という一点突破の教育競争、一人っ子政策が残した人口構造、そしてZhang, Hui, Kong, Lu & Chen(2025)による「寝そべり」の社会心理学的分析までを、統計の断絶という一つの出来事を起点に追う。
2023年6月、中国国家統計局が発表した16〜24歳の都市部失業率は21.3%——記録が残る中で過去最高だった。翌月から、この統計の月次公表は止まった。5カ月後の同年12月、統計局は在学中の学生を対象から除外する新しい算出方式で公表を再開した。方式変更前後の数字を単純比較することはできないが、新方式でも2024年7月には17.1%、8月には18.8%まで上昇し、2025年2月時点でも16.9%という水準が続いている。一部報道では、算出方法から漏れる不完全雇用や農村部の状況を含めると、実質的な水準はさらに高いという推計もある。
この記事では、若年失業という一つの現象の背後にある3つの制度的な重なり——教育競争、人口構造、そして労働市場の構造——を確認し、それらが「躺平(タンピン)」という若者の言葉にどうつながったのかを追う。
中国の大学入試「高考(ガオカオ)」は、世界最大規模の統一試験だ。2024年には過去最多の1,342万人が受験した。
大学進学率そのものは大きく上昇しており、合格率は1999年の55%から2019年には88%まで伸びた。だが「良い大学」への門は依然として極端に狭い。2021年、中国の最上位大学群(「双一流」)に出願した1,078万人のうち、実際に合格したのは約67万人——合格率6.7%だった。地域格差も大きく、河南省では最上位大学群への合格率がわずか0.84%という報道もある。大学に「入れるかどうか」ではなく「どの大学に入れるか」が、その後の人生の選択肢を大きく左右する構造の中で、高考は依然として一発勝負の関門であり続けている。
中国は2016年に一人っ子政策を正式に撤廃したが、10年近く経った今も出生数の減少は続いている。
中国の総人口は2023年に前年比208万人減、2024年も139万人減と3年連続で縮小した。合計特殊出生率は1.09——人口置換水準の2.1を大きく下回る。生産年齢人口(15〜59歳)が総人口に占める割合は、2012年の69.2%から2023年には62.6%まで低下した。一人っ子政策時代に育った世代が労働市場の中核を占める今、労働力の供給そのものが構造的に細り始めている。
「躺平(タンピン、寝そべり)」という言葉が広く注目を集めたのは2021年春のことだ。ある掲示板の削除された投稿に端を発し、「この土地には人間の主体性を称える思想潮流がこれまでなかった。だから自分でそれを作る——寝そべることこそ、私の賢明な運動だ」という一節が拡散した。
中国のネットユーザーはこの言葉を、人類学者クリフォード・ギアツが提示した「インヴォリューション(内巻・内卷)」という概念と結びつけた。もともとは、限られた資源の中で農業の集約化が際限なく進み、生産性の向上を伴わないまま労力だけが積み上がっていく現象を指す学術用語だ。これが「必要以上に激化し続ける、実りの少ない競争」全般を指す言葉として若者のあいだで転用され、その競争から降りる態度としての「躺平」と対になって語られるようになった。Zhang, Hui, Kong, Lu & Chen(2025)は、この「寝そべり」現象を、社会的な期待と実際に得られる報酬の乖離に対する社会心理学的な適応反応として整理している。
「寝そべり」は怠惰の表明ではなく、期待される努力の量と、それに見合う結果が乖離した状況への、静かな不参加という選択だった。
高考という一点突破の教育競争、一人っ子政策が残した人口構造、そして記録的な若年失業率——これら3つは別々の問題ではなく、同じ世代に同時にのしかかっている。
教育投資を極限まで注いでも、労働市場がそれを吸収しきれない。人口構造上、この世代は将来的により重い社会保障負担を担うことになる可能性が高い。88_koreaで見た「教育費をめぐる量と質のトレードオフ」と、87_genzhopeで見た「高齢化した先進国に悲観が偏る」という構造は、経済発展の途上にある中国でも異なる形で現れている——ここでは統計そのものが一時的に姿を消すという、珍しい形で。政策の当否を論じることは本記事の範囲を超えるため、ここでは公表されている統計と学術研究の紹介に徹した。
「寝そべる」という選択そのものが、一つのデータだ。統計が止まった月にも、若者たちは行動によって、公式統計が拾いきれない現実を語り続けていた。
本記事の要約・引用元。政府統計と学術研究を組み合わせている。
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