普段は推測するしかない「Claudeが裏で何を指示されているか」を、Anthropic自身がモデル別・日付別に生テキストで公開した。知識カットオフの明示、ツールを全部見せない設計、拒否の言い回し——自分のシステムプロンプトやCLAUDE.mdを書くときにそのまま参考にできる部分を読む。
Opus 5・Fable 5・Opus 4.8など5モデル分のシステムプロンプト公式ドキュメントから、自分のプロンプト設計にそのまま転用できる3つの具体パターンと、読むときに留意すべき限界を整理したもの。
Claude.aiやモバイルアプリでClaudeが従っているシステムプロンプトは、通常はユーザーの目に触れない。Anthropicは公式ドキュメント「Claude: System Prompts」で、これをモデル別にアコーディオン形式で公開している。Hacker Newsでも473ポイント・208コメントと大きな反応を呼んだ。
公開されているのは Claude Opus 5(2026年7月24日版)、Claude Fable 5(6月9日版)、Claude Opus 4.8(5月28日版)、Claude Opus 4.7(4月16日版)、Claude Sonnet 4.6(2月17日版)の5モデル。バージョン間で変わった箇所は太字で明示されている。ただしドキュメント冒頭に注記があるとおり、Claude 4.6世代以降は「モデルIDごとに単一の固定スナップショット」という運用に変わったため、これらのモデルはそれぞれ1エントリのみで、旧世代のような細かい版違いの差分は存在しない。
重要な留保:この更新はClaude API経由の利用には適用されない。ここで読める内容はClaude.ai・モバイルアプリ向けのシステムプロンプトであり、API経由でシステムプロンプトを自作している場合は別物として扱う必要がある。
数ある記載の中から、自分でプロンプトやエージェントを設計する読者に転用しやすい3点を拾う。
Opus 5は「2026年5月末」、Fable 5とOpus 4.8は「2026年1月末」が信頼できる知識の限界点として本文に明記されている。曖昧に「最近の情報は不確か」と書くのではなく、具体的な月まで踏み込んで自己申告させている点が実務的だ。自作のエージェントに知識の鮮度を守らせたいなら、同じように具体的な月を明示する書き方が参考になる。
Opus 4.8版で導入された<tool_discovery>セクションには「見えているツールリストは一部にすぎず、多くのツール(ユーザーの位置情報・過去の会話詳細・リアルタイムデータ・サードパーティ操作など)は遅延され、tool_searchを通じて読み込まれる」という趣旨の記述がある。これはこのブログ自身の運用(Claude Codeの「deferred tools」を検索して読み込む仕組み)とも重なる、「全部見せるとコンテキストが重くなるので、必要な分だけ後から出す」という設計思想の公式な言語化だ。ツール数が増えてきた自作エージェントで参考にできる。
児童安全に関するセクションには「Claudeは俗語・略語・婉曲表現がCSAM取引や入手に使われているかを復号・定義・確認しない……関連する具体的な語を特定せずに、要求がその話題に触れていると伝えることはできる」という趣旨の指示がある。何が引っかかったかの詳細を明かさず、カテゴリだけを伝えて拒否するという言い回しの型は、自分のツールやチャットボットが不適切な入力を拒否する際の応答文にもそのまま応用できる——判定ロジックを開示すると、それを回避する入力を作られやすくなるためだ。
もう一点、実務的に効くのがフォーマット指示。各モデル共通で「太字・見出し・箇条書きによる過剰な装飾を避け、明瞭さに必要な最小限のフォーマットにとどめる」という趣旨の一文がある。プロンプトを書くときについ箇条書きだらけにしてしまう癖があるなら、この一文をそのまま自分のシステムプロンプトやCLAUDE.mdに転用する価値がある。
Opus 5版のシステムプロンプトには<fable_safeguards_routing>という特有のセクションがある。ユーザーがFable 5を選んでいても、サイバーセキュリティ領域などで悪用されうる一部の話題では、クエリが自動的にOpus 5へリダイレクトされる仕組みだ。Anthropic自身の説明として「セーフガードは保守的にかけている——無害な要求を誤って捕まえることもあるが、平均してセッションの5%未満で発動する」という趣旨の記述がある。
この記載の背景には、2026年6月9日にFable 5(Mythos 5)がリリースされた直後の2026年6月12日、米国商務省の輸出規制によりモデルへのアクセスが一時停止し、6月30日に規制解除、7月1日にアクセスが再開されたという経緯がある。単なる技術文書ではなく、実際に起きた出来事の説明責任を果たす記述までシステムプロンプトに含まれている点は、モデル選びの実務にも関わる一次情報として読む価値がある。
「ハーネス(ツール定義・システムプロンプトなどエージェントの土台)の設計差が結果を左右する」という話は同じモデルで22ポイント差|"ハーネス"がAIコーディングの成績を決めるでも扱った。今回の公式公開は、そのハーネスの中身の一部を実際に覗ける一次資料として、あの記事の続編的な位置づけで読める。