以前この連載で、コンテキストは"有限のアテンション予算"だとするAnthropic公式の考え方を読んだ。今回読むのはその続報にあたる、Claude 5世代向けの公式アップデートだ。論点は「何を足すか」から「何を削るか」に、はっきり軸足が移っている。象徴的な数字がひとつある。Claude Code自身のシステムプロンプトを80%以上削っても、コード評価の精度は落ちなかった。
プロンプトとコンテキストの違いの公式再定義、80%削減しても精度が落ちなかったという具体数字、そして自分のCLAUDE.md・スキルを今日点検するための実務チェックリスト。
以前の記事で、コンテキストエンジニアリングとは容量の話ではなく「有限のアテンション予算」をどう配分するかの設計問題だ、というAnthropic公式の定義を読んだ。ツール数を絞る、サブエージェントに隔離する、その場で検索させる——という3つの間引き手法も、そこで紹介した。
今回読むのは、Claude 5世代のモデルに合わせて公式が新たに出した「ルールのアップデート」だ。前回の記事が"なぜ予算を絞るべきか"という原理原則だったのに対し、今回は"具体的に何をどう書けばいいか"という実装レベルの指針に踏み込んでいる。
まず公式が改めて区別しているのが、この2つの言葉の射程の違いだ。
ユーザーが毎回のリクエストで送る、その場限りの依頼文。「この関数を直して」「このバグの原因を調べて」といった、粒度の細かい指示がここに当たる。
システムプロンプト、スキル、CLAUDE.mdファイル、メモリなど、何度ものやり取りにまたがって再利用される一般的な情報の集合。使い回される以上、単発のプロンプトほど具体的には書けない、という制約が生まれる。
プロンプトは1回ごとに最適化できるが、コンテキストは「あらゆる場面である程度は機能する」形にしておく必要がある。この違いを忘れると、CLAUDE.mdに1回限りの指示を書き足してしまう、といった事故が起きる。
公式が挙げている実例が具体的だ。Claude Code自身のシステムプロンプトから80%以上を削除したところ、コード評価のスコアに測定可能な低下は見られなかったという。
これは「情報を削っても大丈夫だった」という消極的な話ではない。むしろ、不要な情報がモデルの注意力を薄めていた可能性を示す積極的な結果として読める。前回の記事で触れた「情報が増えるほど精度が落ちる現象」の、具体的な裏付けがひとつ増えた形になる。
ここが核心。コンテキストを増やして安全側に倒す発想は、Claude 5世代ではむしろ裏目に出やすい。足りているかではなく、削れるかを疑うのが新しい既定値だ。
公式ブログが挙げている転換は、どれも「手厚く書く」から「任せる・削る」への移行として読める。
抽象的な方針だけでは手が動かないので、公式が挙げている実装レベルの指針を3つに絞って紹介する。
リポジトリの目的は簡潔に留め、紙面はコードベース内の例外・落とし穴に使う。一般的なベストプラクティスの説明は、モデルがすでに知っている前提でよい。長い手順は本体に書かず、独立したスキルに切り出して段階的に開示する。
スキルの役割は情報を検索するための入口であって、細部まで縛る制約集ではない。過度な制約は本当に重要な領域だけに絞り、それ以外はモデルの判断に任せる。長いスキルは複数ファイルに分割し、必要な部分だけを読ませる。
文章で説明するより、コード形式(HTMLモックアップ、設計仕様、テストスイート、他言語での実装例など)で渡す方がモデルにとって明確に伝わる、という指摘も具体的だ。抽象的な仕様書より、動く実例のほうが誤読されにくい。
抽象論で終わらせないために、今日そのまま試せるチェックリストにする。
出典: Claude Blog — The new rules of context engineering for Claude 5 generation models