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コンテキストは削るものになった

以前この連載で、コンテキストは"有限のアテンション予算"だとするAnthropic公式の考え方を読んだ。今回読むのはその続報にあたる、Claude 5世代向けの公式アップデートだ。論点は「何を足すか」から「何を削るか」に、はっきり軸足が移っている。象徴的な数字がひとつある。Claude Code自身のシステムプロンプトを80%以上削っても、コード評価の精度は落ちなかった

この記事で手に入るもの

プロンプトとコンテキストの違いの公式再定義、80%削減しても精度が落ちなかったという具体数字、そして自分のCLAUDE.md・スキルを今日点検するための実務チェックリスト。

01 — 続報を読む

「有限のアテンション予算」の話には、続きがあった

以前の記事で、コンテキストエンジニアリングとは容量の話ではなく「有限のアテンション予算」をどう配分するかの設計問題だ、というAnthropic公式の定義を読んだ。ツール数を絞る、サブエージェントに隔離する、その場で検索させる——という3つの間引き手法も、そこで紹介した。

今回読むのは、Claude 5世代のモデルに合わせて公式が新たに出した「ルールのアップデート」だ。前回の記事が"なぜ予算を絞るべきか"という原理原則だったのに対し、今回は"具体的に何をどう書けばいいか"という実装レベルの指針に踏み込んでいる。


02 — 言葉の整理

「プロンプト」と「コンテキスト」は、そもそも別物だった

まず公式が改めて区別しているのが、この2つの言葉の射程の違いだ。

01

プロンプト=1回分の具体的な指示

ユーザーが毎回のリクエストで送る、その場限りの依頼文。「この関数を直して」「このバグの原因を調べて」といった、粒度の細かい指示がここに当たる。

02

コンテキスト=複数リクエストで使い回される背景

システムプロンプト、スキル、CLAUDE.mdファイル、メモリなど、何度ものやり取りにまたがって再利用される一般的な情報の集合。使い回される以上、単発のプロンプトほど具体的には書けない、という制約が生まれる。

プロンプトは1回ごとに最適化できるが、コンテキストは「あらゆる場面である程度は機能する」形にしておく必要がある。この違いを忘れると、CLAUDE.mdに1回限りの指示を書き足してしまう、といった事故が起きる。


03 — 具体的な数字

80%削っても、測定可能な低下はなかった

公式が挙げている実例が具体的だ。Claude Code自身のシステムプロンプトから80%以上を削除したところ、コード評価のスコアに測定可能な低下は見られなかったという。

これは「情報を削っても大丈夫だった」という消極的な話ではない。むしろ、不要な情報がモデルの注意力を薄めていた可能性を示す積極的な結果として読める。前回の記事で触れた「情報が増えるほど精度が落ちる現象」の、具体的な裏付けがひとつ増えた形になる。

ここが核心。コンテキストを増やして安全側に倒す発想は、Claude 5世代ではむしろ裏目に出やすい。足りているかではなく、削れるかを疑うのが新しい既定値だ。


04 — 指針の転換

「以前の常識」から「今の指針」への4つのシフト

公式ブログが挙げている転換は、どれも「手厚く書く」から「任せる・削る」への移行として読める。

厳密なルールの提示 ⇒ モデルの判断を活用例外的なケースまで事前に書き尽くそうとせず、モデル自身の裁量に委ねる範囲を残す。
使用例を多数提供 ⇒ ツール設計そのものを改善使い方の例を積み増すより、ツールの名前・説明・引数を誤読しにくい形に設計し直す方が効く。
全情報を事前提示 ⇒ 段階的情報開示最初から全部渡すのではなく、必要になった時点で取りに行かせる。前回記事の「Just-in-time方式」の延長線上にある。
指示の繰り返し ⇒ ツール説明に統一同じ注意書きを複数箇所に重複して書かず、ツール定義側の1箇所に集約する。

05 — 実務への翻訳

CLAUDE.md・スキルは、具体的にどう書き直すか

抽象的な方針だけでは手が動かないので、公式が挙げている実装レベルの指針を3つに絞って紹介する。

01

CLAUDE.mdは「明白なこと」を書かない

リポジトリの目的は簡潔に留め、紙面はコードベース内の例外・落とし穴に使う。一般的なベストプラクティスの説明は、モデルがすでに知っている前提でよい。長い手順は本体に書かず、独立したスキルに切り出して段階的に開示する。

02

スキルは「軽量な案内板」にする

スキルの役割は情報を検索するための入口であって、細部まで縛る制約集ではない。過度な制約は本当に重要な領域だけに絞り、それ以外はモデルの判断に任せる。長いスキルは複数ファイルに分割し、必要な部分だけを読ませる。

03

参照資料は「コード」で渡す

文章で説明するより、コード形式(HTMLモックアップ、設計仕様、テストスイート、他言語での実装例など)で渡す方がモデルにとって明確に伝わる、という指摘も具体的だ。抽象的な仕様書より、動く実例のほうが誤読されにくい。


06 — 今日やること

自分のCLAUDE.md・スキルを点検する

抽象論で終わらせないために、今日そのまま試せるチェックリストにする。

「当たり前」を書いていないか探すCLAUDE.mdを開き、モデルが元々知っていそうな一般論の段落がないか確認する。あれば削る候補。
同じ注意書きが複数箇所にないか探すツール定義・CLAUDE.md・スキルの3箇所で同じ制約を重複して書いていないか。重複は1箇所に集約する。
長い手順を独立スキルに切り出せないか検討するCLAUDE.md本体が長くなっているなら、頻度の低い手順から順にスキル側へ移し、必要な時だけ読ませる形にする。
Claude Codeなら /doctor を試す公式が新たに用意したコマンドで、スキルとCLAUDE.mdの自動簡素化・最適化を確認できる。

出典: Claude Blog — The new rules of context engineering for Claude 5 generation models