← AIバイブコーディングTips 一覧へ Haiku 5.5 / サブエージェントのコスト設計

Haiku 5.5は1/10の値段、ただし「10万トークンの段差」がある

Claude Haiku 5.5が出ました。入力$0.10・出力$0.50(100万トークンあたり)で、Haiku 4.5のちょうど1/10。「探す・集める」系のサブエージェントを全部これに寄せたくなる値段です。ただ料金表をよく読むと、プロンプトが10万トークンを超えたとたん単価が5倍になる段差と、同じ文章でもトークン数が増える新しいトークナイザがあります。安いモデルを本当に安く使うための、渡し方の設計を整理しました。

この記事で手に入るもの

Haiku 5.5の料金の段差とトークナイザ差を織り込んだ試算(同じ資料を1回で渡す/2つに分けて渡す)と、サブエージェントに渡すコンテキストを段差の手前に収めるための設計ルール。エフォート設定をどこに置くかの目安も添えます。

01 — 何が出たか

値段は1/10、性能は旧Haikuと別物

公式の料金表(100万トークンあたり)を、旧版と並べるとこうなります。

性能も旧Haikuとは別物です。公式のベンチマークでは、OSWorld 2.1(オフライン部分集合)がHaiku 4.5の15.7%から72.4%へ。一方でTerminal-Bench 4.0は39.2%で、Sonnet 5.5の70.6%とはまだ差があります。公式自身も「複雑なエージェント的コーディングはSonnet 5.5/Opus 5.5の方が上」と書き、Haiku 5.5の用途として要約・コンパクション・分類・素早い調べ物、そしてOpus 5.5やSonnet 5.5のサブエージェントを挙げています。

つまり公式の想定も「親は賢いモデル、下働きはHaiku」。このブログで続けているモデル使い分け(Art40「読む仕事に高いモデルを使わない」)が、そのまま公式の推奨になった形です。


02 — 料金表の注意書き

見落としやすい2つの「隠れ値上げ」

安さの見出しの下に、2つの条件が付いています。

01

10万トークンを超えると、単価が5倍

プロンプトが10万トークンまでなら$0.10/$0.50。超えると$0.50/$2.50に跳ねます。公式によると、Haiku 4.5へのリクエストの約9割は10万トークン以下なので、大半の用途は安い側に収まる、という設計です。それでも超えた側の単価はHaiku 4.5の半分にしかなりません。1/10になるのは段差の手前だけです。

02

トークナイザが変わり、同じ文章でトークンが増える

公式は「タスクあたりわずかに多くのトークンを使う」とだけ書いていますが、Simon Willisonが同じ長いプロンプトで数えたところ、Haiku 4.5の約1.25倍でした。つまり旧Haikuの感覚で8万トークンだった資料は、Haiku 5.5では約10万トークン。段差は旧感覚の「8万」あたりにあると思っておくのが安全です。

ここが核心。Haiku 5.5の安さは「10万トークン未満」という条件付き。そしてトークナイザ差のせいで、旧来の感覚より手前に段差がある。


03 — 電卓を叩く

同じ資料でも、渡し方で4倍以上変わる

具体的に計算してみます。前提は「サブエージェントに資料を読ませて、短い要約(旧トークナイザで3,000トークン)を返させる」。トークン数は旧Haikuでの数え方で書き、Haiku 5.5側は1.25倍して計算しました。10万トークンを超えたリクエストは、入出力とも上の単価で丸ごと計算しています。

# ケースA:旧6万トークンの資料を1回で渡す
Haiku 4.5 : 60,000×$1.00 + 3,000×$5.00        ≒ $0.075
Haiku 5.5 : 75,000×$0.10 + 3,750×$0.50        ≒ $0.0094  (約1/8)

# ケースB:旧9万トークンの資料を1回で渡す(5.5では11.25万=段差超え)
Haiku 4.5 : 90,000×$1.00 + 3,000×$5.00        ≒ $0.105
Haiku 5.5 : 112,500×$0.50 + 3,750×$2.50       ≒ $0.066   (約6割)

# ケースC:ケースBの資料を半分ずつ、2体のサブエージェントに渡す
Haiku 5.5 : (56,250×$0.10 + 3,750×$0.50) × 2 ≒ $0.015   (Bの約1/4)
# 単価は100万トークンあたり。親が2つの要約をまとめ直す分は別途

ケースAは見出しどおりの値下げですが、ケースBでは「1/10」が「6割」まで縮みます。そして同じ資料を分けて渡すだけのケースCは、Bの4分の1強。Haiku 5.5では、モデル選びより「1回に渡す量」の方が効く場面が出てきます。

もう一つの見落としが、資料以外の入力です。システムプロンプトやツール定義も入力トークンに数えられます。Claude Codeが会話の前に3万3000トークンを送っていた実測(Art36)のように、ハーネスによっては資料を渡す前にかなりの分を使っています。資料に使える残りは「10万-固定の前置き」で考える必要があります。


04 — エフォート

Haiku 5.5は「考えない」設定ができない

もう一つの変更点が、Haikuで初めてエフォート設定(low/medium/high/xhigh/max)が付いたことです。Simon Willisonによると、推論はオフにできず、既定はmedium。彼の検証(同じお題のSVG描画)では、lowで約7秒・約0.09セント、maxでは5分9秒・約3.38セントでした。同じ1回の呼び出しで約36倍の差です。

以前、「考えさせない」サブエージェントでアラート分類を速く安く回す設計を紹介しました(Art64)。Haiku 5.5では推論を切れないので、同じ狙いはエフォートをlowに下げることで近づけることになります。既定のmediumのまま大量の下働きを回すと、トークン単価が安くても推論のぶんだけ出力が膨らみます。

エフォートとモデル選びは別の軸です(Art49)。目安としては次のように分けると考えやすくなります。


05 — チェックリスト

サブエージェントをHaiku 5.5に寄せる前に

自分の運用でも「探す・数える・集める・要約するサブエージェントはhaiku指定」というルールを置いています。Haiku 5.5に合わせて見直すと、確認すべき点は次の6つでした。

✓
1体に渡す量を、旧感覚で7万トークン前後までにしたトークナイザ差(約1.25倍)と前置きの分を引いて、段差の手前に収める。
✓
大きな資料は分割して複数体に渡す1体で段差を越えるより、分けて要約させて親でまとめる方が安い。
✓
サブエージェントには「該当箇所だけ」を返させる出力も10万超の側では5倍。表や箇条書きで短く返させる。
✓
エフォートを仕事の種類で決めた答えが資料にある仕事はlow。既定のmediumに任せきりにしない。
✓
使っている環境で「haiku」がどの版を指すか確認した公式ページにはClaude Codeでの扱いの記載がなかった。エイリアスが新版を指しているかは、自分の環境で確かめる。
✓
実際のトークン数を一度数えた見積もりではなく、トークンカウントAPIや実行ログで、代表的なタスクの入力量を新しいトークナイザで測っておく。

安いモデルが出ると「全部そっちに寄せる」で終わりがちですが、Haiku 5.5は渡し方まで含めて設計したときに初めて1/10になるモデルです。料金表の段差を知っているかどうかで、同じ仕事のコストが数倍変わります。

出典:Anthropic「Claude Haiku 5.5」製品ページ(料金・ベンチマーク・推奨用途)、Simon Willison「Claude Haiku 5.5」(2026年10月7日、トークナイザ比較・エフォート別の時間と費用・推論がオフにできない点)。試算は筆者が上記の単価とトークナイザ比(約1.25倍)から計算したもので、10万トークン超のリクエストは全体を上位単価で計算しています。実際の請求の境界条件は公式の料金ページで確認してください。2026年10月時点の情報です。